山梨モデルが示す「水素発電」の可能性

2025-10-06

地域情報

山梨モデルが示す「水素発電」の可能性




1、「電気の貯蔵庫」の必要性


地球温暖化対策が急務となる中、太陽光や風力などの再生可能エネルギー(再エネ)への転換は世界的な流れとなっています。しかし、再エネには避けられない弱点があります。それは、天候に左右される「不安定性」です。

晴れた日や風の強い日は電気が大量に作られますが、需要と供給のバランスが崩れると、電力網を守るためにせっかく作った電気を「捨てる(出力抑制)」という深刻なジレンマに陥ります。

このジレンマを解決し、不安定な電気を安定したエネルギーに変える切り札となるのが「水素」です。山梨モデルが示すのは、この余った電気を貯蔵し、必要な時に安定した電気に戻す「電気の貯蔵庫」としての「水素発電」の可能性です。


2、不安定な電気を「安定した燃料」に


山梨県の取り組みの中心は、再エネの弱点を根本的に克服する「電力・ガス変換(P2G)」技術にあります。米倉山技術研究サイトでは、この技術で不安定な電気を「安定した燃料」へと変えています


「電力・ガス変換(P2G)」による水素製造の流れ

  1. 再エネの利用: 太陽光発電などで作られた、余剰となった電気をそのまま活用します。

  2. 水の電気分解: この電気を使って、水(H2O)を分解し、グリーン水素(H2)を製造します。この過程で二酸化炭素(CO2)は一切排出しません。

  3. 長期貯蔵: 電気はバッテリーに貯蔵しても容量や期間に限界がありますが、水素ガスにすれば大量かつ長期の貯蔵が可能です。

これにより、太陽が出ていない夜間や曇りの日でも、あらかじめ貯蔵しておいた水素を取り出して使えるようになり、再エネの弱点である「不安定性」を劇的に克服できるのです。


3、「つかう」選択肢


貯蔵されたグリーン水素は、必要な時に再び電気に戻す「水素発電」という形で活用されます。その利用形態は非常に多様です。


定置型燃料電池発電

これは、水素と酸素を反応させて電気を生み出す燃料電池の発電機を、工場や公共施設に設置する仕組みです。

  • クリーンな安定電源: 発電時に二酸化炭素(CO2)を排出せず、常に安定した電力を供給できます。

  • 非常用電源(BCP機能): 災害や広域停電が発生した場合でも、貯蔵された水素を使って長期的に発電を継続できるため、病院や避難所などの事業継続計画(BCP)において非常に重要な役割を果たします。


水素ガスタービン発電

さらに大規模な発電所では、既存の火力発電所に水素を混ぜて燃焼させたり、将来的に100%水素だけで燃焼させて発電する技術(水素ガスタービン発電)の開発が進んでいます。これが実用化すれば、地域だけでなく、国全体の電力系統における脱炭素化が大きく前進します。


4、なぜ山梨モデルが日本の電力安定化の鍵を握るのか


山梨モデルは、技術的な先進性だけでなく、その地域循環の仕組みが評価されています

「つくる(再エネ)」から「貯蔵(水素)」、そして「つかう(水素発電)」までを地域内で完結させることで、電力の地産地消を実現しています。これにより、遠い発電所から電気を送る際の送電ロスも最小限に抑えられます

最大の課題であるコスト競争力についても、山梨は「電力・ガス変換(P2G)」の効率向上と設備量産化に挑戦し続けています。この取り組みが成功し、水素発電のコストが下がることで、将来的に水素発電は、化石燃料に依存した発電よりも安価でクリーンな選択肢となり得ます

山梨県が築くこの成功モデルは、日本の他地域の再エネ導入拡大と電力安定化のモデルケースとなり、日本のエネルギー自給率向上と脱炭素化に大きく貢献する鍵となるでしょう。

2022年度の日本の化石燃料輸入額は約35兆円に達しました。2019年度には約16.5兆円だった輸入額が大幅に増加し、これは主にウクライナ侵攻による燃料価格の高騰や新興国でのエネルギー需要増加などが主な原因です。

この約35兆円が、全てでなくても国民のためになることに使われるようになれば、クリーンな、高福祉な国になれそうな気がします!まあ、その前に国の借金返済が必要ですが・・・



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